ドボ博 座談会 パート7

橋の形を決めるのは地盤?

zadankai
「東京インフラ解剖」といきなり言われても、何の事だかよくわからない。そんな方にも、東京インフラを見る「とっかかり」を作ってもらうため、独自のこだわりをもつ専門家による、マニアックな座談会を行いました。壁マニア、地形マニア、橋マニア、鉄道マニア・・・。これを読めば、きっとあなたなりの東京インフラの見方が見つかるはずです。

 


パート7 “橋の形を決めるのは地盤?”

(橋に詳しい)紅林さん

橋の形をみていくと,だいたい東京の場合は地盤がわかるんですよ!

北河さん

そうなんですか!!(驚)

(橋に詳しい)紅林さん

ほぼ合うんです。上路アーチは地盤が良いところしかできないんですよね。神田川を通ると、ずーっと上路アーチ。

東京インフラ026 神田川

(興味津々な)田村さん

聖橋とかのことですか?

東京インフラ028 聖橋

(橋に詳しい)紅林さん

聖橋から下流は、柳橋まで全部上路アーチ。あそこって人工河川じゃないですか。だからあそこは全部地盤が良いですね。

(土木マニアの)八馬さん

表層の弱いところは全部剥ぎとっているから、支持地盤がすぐ出てくるんですね。

(橋に詳しい)紅林さん

結局反力を取りやすいですよね。アーチの反力。悪いところは反力を取れないからできないんですよね。だから隅田川でも、蔵前橋、その上の駒形橋。あのあたり、めちゃくちゃ地盤が良いんですよ。

北河さん

下流にある永代橋とかは、すごい苦労しましたよね。

東京インフラ017 永代橋

(橋に詳しい)紅林さん

永代とか、清洲とか、地盤が悪くてズブズブですね。

(スリバチ学会の)皆川さん

同じ沖積層なので,地質的には、あまり変わらないようなイメージなんですが...

(橋に詳しい)紅林さん

全然違うんです。永代橋とか清洲橋 は、実際に30mくらいの深さまでケーソンというもので基礎をつくっています。それに対して上流の駒形橋とか、厩橋とかは直接基礎。杭が無いんです。

清洲橋一般図(下段右から2番目に地質図が掲載されている)  提供:土木学会附属土木図書館

(土木写真家の)大村さん

沖積層を取り除いちゃうと、そこにまた地形が現れてくるんですね。

(橋に詳しい)紅林さん

唯一例外が、隅田川でいくと勝鬨橋なんですよ。勝鬨橋は実は杭が無いんです。

東京インフラ009 勝鬨橋

(スリバチ学会の)皆川さん

地盤が良いんですか??

(橋に詳しい)紅林さん

良いんです。ちょっと上の佃大橋は20mくらい掘らないと固い地盤が出てこない。下流側にできた築地大橋。あれも30mくらいの長さになっているんです。

(土木マニアの)八馬さん

なんで勝鬨橋なんですか?

(橋に詳しい)紅林さん

最初は今の位置より150mくらい上流に架ける予定だったんです。明治時代は。しかし,調査をしてみたら地盤が悪かった。周りをいっぱい地質調査しているんですよ。一番良いところを狙って架けたんですよ。

 

(鉄道にとても詳しい)小野田さん

地盤に関して言うと,東京駅はやっぱり日比谷の入江の縁の上にできているので、地盤が良いんですね。東京駅は。丸ビルの方はちょっと離れてるだけなんだけど、地盤が良くないって言いますね。杭の長さが確か違うはずです。

東京インフラ004 東京駅


(橋に詳しい)紅林さん

丸ビルは関東大震災の直前の地震の際に結構やられましたもんね。

(鉄道にとても詳しい)小野田さん

東京駅はビクともしなかったんです。田山花袋が『東京震災記』の中でその事について書いています。

北河さん

入り江の近くを歩くとわりと古い構造物があるんですかね...

(鉄道にとても詳しい)小野田さん

別にそこを狙って東京駅を作ったわけじゃないんですけど。偶然なんですね。

(土木マニアの)八馬さん

偶然なんですか!!

(鉄道にとても詳しい)小野田さん

場所が良かった。結果的に。ちょっといくと谷になって、溺れ谷になっちゃうんですよね。

 

【次回へつづく】

 


編集担当(学芸員)よりワンポイント解説(ドボク初心者向け)

座談会に関する部分について、編集担当が簡単に補足します。

 

■アーチ橋の種類って??

橋の中でも特に印象的な形状である「アーチ橋」。今回は、アーチ橋の形状と地盤との関係が話題になっていました。

 

アーチ橋は、構造としてのアーチの部分と実際に歩いたり車が走ったりする路面の位置関係から、
上路アーチ橋」「中路アーチ橋」「下路アーチ橋」の3つに分類されます。(下図)

アーチ橋の分類(概念図)

 

今回の座談会では、地盤の強さとアーチの種類が関係あることが指摘されていますね。
これはそれぞれのアーチと地面との接続部や構造の条件が異なることに由来しています。

 

 

 

■基礎の種類って??

橋をはじめとして、多くの構造物はその重さを支えるために、基礎を構築した上で成立しています。

 

地盤が固い(支持層と言われる部分)場所であれば、直接基礎とよばれるもので十分ですが、地盤が弱い(軟弱層と言われる部分)が地盤が固い層の上にある場合は、そのままでは沈下してしまったり、地震に耐えられない場合があります。

 

そういった場合は、地盤が固い層(支持層)に届くように、杭をうったり(杭基礎)、大型のコンクリート製や鋼製の箱を沈めたり(ケーソン基礎)して、橋のような大きな構造物を支えることができるようにしています。

 

基礎については、土木研究所のHPでわかりやすく解説してあります。ぜひ参考にしてみてください。
https://www.pwri.go.jp/caesar/overview/01-05.html

 

 


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