ドボ博 座談会 パート10

東京の地下は早く掘ったもん勝ち!?


zadankai
「東京インフラ解剖」といきなり言われても、何の事だかよくわからない。そんな方にも、東京インフラを見る「とっかかり」を作ってもらうため、独自のこだわりをもつ専門家による、マニアックな座談会を行いました。壁マニア、地形マニア、橋マニア、鉄道マニア・・・。これを読めば、きっとあなたなりの東京インフラの見方が見つかるはずです。

 


パート10 “東京の地下は早く掘ったもん勝ち!?”

(スリバチ学会の)皆川さん

ちなみに、杉浦さんは東京の地下鉄の断面図も書かれていますよ。

東京インフラ040 メトロ銀座線

(地図デザイナーでもある)杉浦さん

間違っている部分もあると思うんです。ただ、すごく自分が興味があって。地下鉄博物館に行って、地上から地下鉄のホームまでの高さのデータをもらってきました。そして駅と駅の間は,自分でなんとなく繋げました。そうすると六本木が深い深いって言われているのに、実は麻布十番の駅の方が深いとか。そういうこととかが、パッと視覚化されるための図を作りました。

東京地下鉄12縦断図(『地図趣味。』p.62より抜粋)

北河さん

それはWebで公開とかはしてないんですか?

(地図デザイナーでもある)杉浦さん

今回出版した本の中に掲載しています。(※『地図趣味』洋泉社 2016)。趣味の地図の本なんですけどね。地下鉄の図は、自分で図化する魅力に気づいたきっかけの図ということで、ちょっとだけ紹介しています。ただ、あくまで概念図で正確ではないです。今も、シールドマシンが同じ地質を進むとか伺うと(※座談会パート9参照)、ちょっとドキドキする、というか(笑)

(※画像をクリックするとAmazonの購入画面に進みます)

 

 

(いろいろ聞きたそうな)大村さん

駅と駅をつなぐっていうだけでも、基本的にボーリングデータの間を埋めながら、地質の縦断図を作っているはずですから、やっていることは一緒だと思うんですね。

(地図デザイナーでもある)杉浦さん

自分の地図を使って、地下鉄で右に曲がっている、下がっているとか、実感したいと思ったんですが、案外わからなくて。結局、敗北の実感しかなかったです。

(いろいろ聞きたそうな)大村さん

朝とか、ガラガラの時に、一番後ろの車両まで行って見通すとわかりますよね。

(鉄道のことなら)小野田さん

断面がシールドになると丸くなって、開削になると四角になったりとか。勾配もよくわかるしね。地下鉄の展望ビデオっていうのが売ってるんですけど。あれ見るとね、地下鉄で前を見たってしかたないじゃない、ってみんな思うでしょ。

(地図デザイナーでもある)杉浦さん

地下鉄博物館に行くと運転させてもらえるんですよね。細かいことは全然わかってないんないですけど、ザックリはそれでわかるようになったんですよ。

(鉄道のことなら)小野田さん

どっちが上か、どっちが下かで。古いのは上の方にあるんだけど、だんだん下に潜っていくんですね。上下関係も結構おもしろい。

(地図デザイナーでもある)杉浦さん

断面図だけでは満足できなくて平面図も作ったんですよ。地下鉄交差点マップみたいな風にして。そうすると一つの駅に4線通っていたら、どっちが上でどっちが下を通っていたか。やっぱり気になりはじめて。

東京地下鉄交差点標高マップ(『地図趣味。』p.63より抜粋)

北河さん

一番複雑なところはどこなんですか??

(鉄道のことなら)小野田さん

永田町かどこか??

(地下鉄にも詳しい)大村さん

技術的に一番結構難しいのは新宿三丁目ですね。副都心線のを通すときは、丸ノ内線の下を潜らせてるんです。それ自体も難しいんですが、実は都営新宿線の方がもっと深くにあるんですよ。都営新宿線の上を通して、丸ノ内線の下を通すみたいに縫うように作っているんです。都営新宿線に対しては浮き上がらないように、トンネルをを抑えるような工夫をして、丸ノ内線に対しては下側から直接躯体を支持して、その下を掘るようなことをやってますね。

(地図デザイナーでもある)杉浦さん

何センチとかだったんですよね。そことそこの隙間が。

(地下鉄にも詳しい)大村さん

実際に掘るときには、コンクリートの箱躯体の外側が見える状態で、下からジャッキで支えるんですね。土が無くなっちゃうんで。この上に電車が、ガタガタって通ってるんですけど。

北河さん

新宿はそういった視点で見ると面白いんですね。なんで、都営新宿線はそんなに深いところにいったんですかね??

(スリバチ学会の)皆川さん

新しいのが必ずしも深い、というわけでもないんですね。

(地下鉄にも詳しい)大村さん

順番というよりは、層をどうやって使い分けるか、ということだと思うんですよね。

(鉄道のことなら)小野田さん

早く掘った者もん勝ちってことですかね。

(土木マニアな)八馬さん

地下は早いもん勝ちってよく言われてますよね。

(鉄道のことなら)小野田さん

それにしても、やっぱりここにこういう計画があるよ、ってわかってないと作れないからね。

(スリバチ学会の)皆川さん

間を抜くなんて、マスタープランがないと、なかなかできないことですよね、本当に。計画のことを知りたくもなりますね。

 

<パート11へ続く>

 


編集担当(学芸員)による補足

■都心の地下開発について

今回の座談会で話題になった、都心の地下開発ですが、4年前のクローズアップ現代(NHK)で詳細にまとめられています。ここでも、今回話題になった新宿三丁目の「わずか11cm」の間を縫う様子や、浅い地下は過密状況にあることがよくわかります。

クローズアップ現代 「広がる地下迷宮〜都市の地下開発最前線〜」
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3332/1.html

 

■大江戸線の地質図と地下鉄との関係

東京の地下鉄の中でも、特に地下が深い(エスカレータにたくさん乗る)印象をもつ大江戸線。その工事のための地質調査報告書に、大江戸線と地質との関係がまとめられています。

http://www.tokyo-geo.or.jp/tech-note-pdf/No34.pdf

 

他にも、地下鉄の断面図は、今回話題にあがっている『地図趣味。』に加え、竹内正浩『地図と愉しむ東京歴史散歩――地下の秘密篇』(中公新書)にも記載されていますのでおすすめです。丸の内線や銀座線が浅いところにある、ということや、有楽町線が電力を節約するためにアップダウンのあるようになっていることなどがわかります。

■東京動脈で実感してみよう!

東京の地下鉄や鉄道の実際を模型にした「東京動脈」という作品があります。2007年に当時東京大学大学院生であった栗山貴嗣さんが製作したものです。

栗山さんのYouTubeなどで作品をみることができます。

 

 

いつもは読書やスマホや広告をみて、だらっと過ごしてしまう地下鉄ですが、少し意識してアップダウンやその地上との位置関係をみてみるのもおもしろそうですね。

 

 

 


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