ドボ博 座談会 パート17

線路を跨いだ跨線廊とロープウェイ

zadankai
「東京インフラ解剖」といきなり言われても、何の事だかよくわからない。そんな方にも、東京インフラを見る「とっかかり」を作ってもらうため、独自のこだわりをもつ専門家による、マニアックな座談会を行いました。壁マニア、地形マニア、橋マニア、鉄道マニア・・・。これを読めば、きっとあなたなりの東京インフラの見方が見つかるはずです。


パート17 “線路を跨いだ跨線廊とロープウェイ”

坂倉準三による渋谷駅前計画(提供:小野田滋)

 

(渋谷に詳しい)田村さん

渋い写真ですね。

(鉄道に詳しい)小野田さん

これ、モンタージュ写真ですね。

(渋谷に詳しい)田村さん

坂倉準三の計画ですよね。

(鉄道に詳しい)小野田さん

昭和20年代の後半。

(渋谷に詳しい)田村さん

今のヒカリエのところが、バスターミナルになる計画ですね。

(鉄道に詳しい)小野田さん

これ(※写真右上の建物)が文化会館。

(渋谷に詳しい)田村さん

そうです、そうです。

(鉄道に詳しい)小野田さん

東急会館ができる時のモンタージュになっていますね。東急会館は「完成予想」ですが、ほぼこの姿で完成します。(次の写真について)これは、東京高速鉄道(現:銀座線)ですね。

メトロ銀座線:渋谷から青山方面を見る(提供:土木学会附属土木図書館)

北河さん

銀座線を見おくる二人。これだけ見ると、地下鉄だとわかりませんね。

(スリバチ学会の)皆川さん

銀座線と井の頭線が繋がると便利だな、と思うんですけど。

(鉄道に詳しい)小野田さん

昔、計画はあったんですけどね。

(渋谷に詳しい)田村さん

あの計画は、結局どうなったんですか?

(鉄道に詳しい)小野田さん

その後ね、戦前の東京オリンピックのときも、銀座線を伸ばすっていう話があったんですけど。結局みんな立ち消えになっちゃっている。

(スリバチ学会の)皆川さん

そうなんですね。いろんな事情がありそうですねぇ。

北河さん

相互直通やってないの、銀座線と丸ノ内線だけですよね。

(鉄道に詳しい)小野田さん

銀座線は、あそこから先に伸ばすようには、できている。

(渋谷に詳しい)田村さん

渋谷駅っていうのは立体的、三次元的に権利が絡んでいるらしいですね。詳細はわかりませんが。

(鉄道に詳しい)小野田さん

山手線の上に、東急百貨店の渡り廊下があったんですね。すでに銀座線が跨いでいるから、その真上を跨いでもかまわないだろう、ということで実現しました。設計は、武藤清が監修して、国鉄特殊設計室が協力し、珍しいフィーレンデール3層構造の渡り廊下が完成しました。(下写真参照)

東急会館と東横百貨店と跨線廊(提供:小野田滋)

東急会館と東横百貨店と跨線廊(航空写真)(提供:小野田滋)

渋谷駅跨線廊(提供:小野田滋)

(鉄道に詳しい)小野田さん

左側の白い建物が、戦前に完成した東横百貨店で、右側の大きな建物が、戦後に玉電ビルを増築して完成した東急会館です。この間を結ぶために、銀座線の真上に山手線を跨ぐ、跨線廊という3層の渡り廊下を完成させました。

(渋谷に詳しい)田村さん

真ん中のところですね。

(鉄道に詳しい)小野田さん

三層の渡り廊下になっていて。跨線廊っていう名前がついていました。

(橋に詳しい)紅林さん

その前は、ロープウェイでつながってたんですよね。

(渋谷に詳しい)田村さん

1951年〜1953年に。

ヤックル大山

ロープウェイって、こういうところにも作るんですか?(笑)

(渋谷に詳しい)田村さん

ようするに、デパートが楽園だったんですよ。デパートの屋上が。

(鉄道に詳しい)小野田さん

東急会館ができる前は、西側のハチ公広場のあたりに戦前につくりかけたままだった玉電ビルの小さい建物があって。東側の東横百貨店の屋上との間に、ロープウェイがありました。

(渋谷に詳しい)田村さん

山手線を超えて。あっちいってくる、って感じで乗ったんですかね。

(鉄道に詳しい)小野田さん

「ひばり号」ですね。

(橋に詳しい)紅林さん

『東京のえくぼ』っていう映画があって、それに出てきますよ。

(鉄道に詳しい)小野田さん

ロープウェイは、戦前の浅草松屋の屋上にもあった。

東京インフラ035 浅草駅

(渋谷に詳しい)田村さん

浅草が一号なんですよね?

(鉄道に詳しい)小野田さん

あれが一号です。

(渋谷に詳しい)田村さん

あれを持ってきたんです、渋谷に。

(鉄道に詳しい)小野田さん

浅草松屋のロープウェイも、最初は隅田川を渡る計画があったんですけれど、許可が下りなくて。デパートの屋上の遊戯施設として、営業していました。

(壁写真の)杉浦さん

駅の立体的な利用という意味では、田村先生の立体模型。渋谷駅の。あれがすごく普通の人には伝わりやすいと思うんです。インフラの見えないところが見えてる、だけの模型。渋谷駅だけでなく、東京駅、新宿駅も作られてますよね。。

(土木マニアな)八馬さん

2016年に六本木の21_21で開催された土木展で、展示していましたよね。また、ドボ博も展示した昨年11月の新宿駅西口での展示でも。また機会があれば、展示してほしいですね。その際は教えてください。

(渋谷に詳しい)田村さん

展示の様子は、このリンクから見ることができます。ぜひ御覧ください。また展示する際は、ドボ博からも告知したいと思います。
https://www.tokyoplatform.com/tokyo/platform/01-stations/01-1-shibuya2016-bis/

 

【次回へつづく】

 


座談会アフタートーク

■跨線廊についての詳細解説

今回の座談会で一番印象に残るのは、渋谷駅の『跨線廊』の話題ではないでしょうか。フィーレンデール構造で3層構造というのは、ダイナミックな構成ですよね(編集担当も驚きました)。構造計算や工事も大変だったのではないかと想像できます。ドボ博鉄道担当理事の小野田氏は、別媒体で解説を書かれています。今回はその解説のPDFを以下リンクから読むことができます。下記図面とともにぜひお読みください。

<コラム>山手線を跨いだ跨線廊(著:小野田滋)
出典:小野田滋「共同駅とモダニズム建築-玉電ビルから東急会館へ・その2-」『鉄道ファン』No.607(2011)

 

渋谷駅跨線廊 断面図(提供:小野田滋)

 

■東横線渋谷駅および東急百貨店の変遷

渋谷の歴史についての話題が展開していきますが、「渋谷文化プロジェクト」HPから渋谷駅のトランスフォームの変遷をみることができます。これを読んでから今回の座談会をみると、更に理解が深まることと思います。街が「変化」していくこと、それ自体が渋谷らしさを形成しているのかもしれません。

https://www.shibuyabunka.com/special/201303/platform1/column.html

 

 

■渋谷フォトミュージアムで当時の様子を知ってみよう

東急電鉄が運営する「渋谷フォトミュージアム」では、渋谷の昔の写真をみることもできます。今回話題になった「ひばり号」の写真などもこのサイトからみることができます。

https://shibuyaphotomuseum.jp/


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