東京インフラ059 野川自然再生事業

Modern entry point (commons), 21st century type civil engineering business!


たんぼにどじょう池、湿地にヨシ原、これがホントに土木事業なのかと疑う人もいるだろう。しかし、これこそが“21世紀の土木事業”なのだ。20世紀が開発の時代だったとすれば、21世紀は環境回復の時代である。失われた自然を取り戻すために、土木技術が貢献できることは多い。
整備では、土・木・石といった自然素材のみを材料とし、人工物・人工エネルギーは原則不使用、人為的な移植・移入の禁止、水源は野川からの取水と雨水のみという基本原則のもと、原風景とも呼ぶべき懐かしい風景が生み出されている。しかし、この取り組みは単なる懐古主義ではない。
例えば、たんぼは、泥を介して昨日までの見知らぬ人と仲良くなるコミュニティづくりの場であり、子供たちが身をもって年寄りの知恵の深さを学ぶ学習の場でもある。自然回復のために、あえて草刈りの回数を減らしている点も、常に管理が要求される従来の公共空間では難しかったことだ。なにより、地域の市民団体である「野川自然の会」が環境学習活動やモニタリング、維持管理を担っているのが素晴らしい。
そう、ここはまさに現代版の入会地(コモンズ)である。地域のありように地域の人々が責任を持つ。東京に生まれた小さな緑の<肺>は、私たちにこれからの地域の目指すべき方向を提示してくれている。
なお本整備は、2015年度に土木学会デザイン賞優秀賞を受賞している。(二井)

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種別 河川
所在地 東京都小金井市
規模:約0.5km(二枚橋〜小金井新橋間) 野川第一調節池
備考 2014年度土木学会デザイン賞優秀賞

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