東京インフラ024 神田下水

The oldest “Renal Artery” in modern Tokyo


人体と同じく、必要な栄養を摂取して、体内に行きわたらせるだけで、都市の<健康>は維持できない。入れたものは出す、つまり老廃物の正しい排出も、<健康>の維持には大切である。体の隅々から老廃物を集め、解毒して、体外に排出する。都市において、この<泌尿器系>の役割を担うのが下水道である。扱う老廃物は主に雨水と生活排水。

実は東京には、背割下水などのインフラと、し尿を肥料として活用する社会システムによる、排水と汚水処理のメカニズムが江戸時代から存在していた。しかし明治期に流行したコレラは、より強力なインフラを必要とした。人家密集地で下水の流れが滞ることで、不衛生な都市環境が生まれる。それを打開するために下水道の改良が叫ばれ、まずはすでに多数のコレラの犠牲者を出していた神田に、近代的な管渠が建設された。

それは、約1kmの卵形の管渠からなる本管と、約3.1kmの円形管からなる分管で、その一部は今なお使用されている。本管に卵を逆さにした断面を採用したのは、水位が低いほど管の幅が細くなり、少量の水でも流しきることができるからである。これは、イギリスで多く採用された形式で、神田より前にイギリス人が設計した横浜や神戸の外国人居留地の下水道管でも確認することができる。

神田下水は、当初川にそのまま排出するだけの単純な管路であったが、その後の工事で、下水を処理する汚水処分場に接続された。こうして、<腎臓>につながる<腎動脈>へと進化したわけである。(北河)
 

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種別 下水道管
所在地 東京都千代田区
構造形式 煉瓦造 卵形・円形
規模 総延長4.1km
竣工年 1884-5年
管理者 東京都
備考 土木学会選奨土木遺産
選奨土木遺産
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