東京インフラ025 元町公園・旧元町小学校

Formative aesthetic making use of the sloped configuration – Reconstructive Primary School and Reconstructive Small Urban Park after the Great Kanto Earthquake Disaster


<細胞>を育てる場所であり、避難所も併設し健康と安全な成育が目指された。

関東大震災の後計画された117の復興小学校に併設された52か所の小公園のひとつで、小学校と一体的に当時の姿を伝える唯一の事例。本郷台地が神田川に向かって下る斜面地の地形を巧みに取り込んだ空間設計となっている。

東京市役所発行の案内書には、
「北は本郷区元町小学校に隣接し、東側は街路に、南側はお茶の水端の電車通りに面し、西は高い崖となり、近くは飯田橋九段方面を眼下に、遠くは富士箱根の連峰より秩父の山々をも一望に収め得る眺望は本市小公園中他に比を見ない」
と紹介されている。

欧米各国で都市公園を視察した東京市公園課長井下清のもとで設計された復興小公園は、広場を主体とする都市的性格を有し、その後の児童公園のプロトタイプになったとされる。1926年の月島第二公園を皮切りに、わずか6年ほどの間に52もの公園を設計・施工・開園させたという異例のスピードには目をみはるものがある。

「緑に囲われた丘陵の斜面を三つのレベルに分けて巧みに造成し、階段を大胆に使って独特の雰囲気を生み出している。バロック的でありながら、どこか日本ならではの端正な造形感覚と空間をほどよく仕切る独特のスケール感を見せているのが面白い。まず門・階段・正面のニッチという、アプローチの空間的演出が素晴らしい。階段を上りつめると、右は児童遊戯場、左は小さな自由広場へと振り分けられる。後者からは、建築家ガウディのグエル公園を思わせるような動きのある造形的な階段によって、開放的な自由広場へと導かれる」(陣内)

現在は公園と旧小学校の連続性が失われているものの、復興小公園・復興小学校の計画理念は90年近く経った今日もまったく色褪せることはない。(土井)

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引用
陣内秀信:東京の空間人類学、ちくま学芸文庫、1992.

種別 公園・旧小学校
所在地 東京都文京区
規模 元町公園:面積3519㎡、旧元町小学校:延べ床面積4879㎡
竣工年 元町公園:1930年、旧元町小学校:1927年(1998年閉校)
管理者 文京区
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