東京インフラ076 五反田駅

山手線を突破せよ


五反田駅で山手線と接続する東急電鉄池上線は、山手線を跨いで五反田駅を設けている。鉄道を跨いで線路を建設することは、列車を走らせながらその上に新たな鉄道を建設しなければならないので、工事の難易度も高くなり、工事費も高くなる。また、会社が異なる場合は、高架橋の高さや工事方法などについて協議をしなければならないので、問題を解決するために面倒な手続きが必要となる。

こうしたハンディキャップがあるにもかかわらず、あえて山手線の上に五反田駅を設けた理由は、池上線の前身である池上電気鉄道が、山手線を越えてさらに都心をめざしていたからにほかならない。池上電気鉄道は、五反田と蒲田を結ぶ私鉄として1923年に全線が開業したが、さらに山手線を跨いで白金方面へ線路を延ばす計画であった。橋脚を山手線の線路の間に設けずにひと跨ぎするために支間43.5mの鋼製のラーメン橋が設計され、アプローチ部分の高架橋の一部には珍しいトレッスル式の橋脚が用いられた。

しかし、白金への延長線は実現せず、池上電気鉄道も1934年にライバルの目黒蒲田電鉄(現在の東急電鉄)に吸収合併されて池上線となった。東横線や目黒線が地下鉄との相互直通運転を果たす中で、池上線だけは孤高の路線として3両編成の電車が五反田と蒲田を往復し続けており、山手線をひと跨ぎした五反田駅が都心をめざした池上電気鉄道の心意気を今に伝えている。(小野田)
 

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