四国インフラ041 宿毛河戸堰

老爺の語りが残った風景


『水の流れに逆らわず、素直に堰を築けばよい。』土佐藩家老、野中兼山が老爺の教えをもとに江戸時代初期に築造されたとされる河戸堰(麻生堰参照)。現在は可動堰へと改築されているが、改築前は優美な曲線が堰の左岸上流方向に伸びる、曲線斜め堰であった。現在は右岸側の一部を河川の高水敷に残す形でそれ以外の部分はゲート式の構造に変わっている。ひとたび洪水が起きれば川の中に固定された堰は洪水の流れの障害物となる。そこで洪水時には機械的にゲートを上げて水を流す機能を持っているのが、現在の河戸堰である。改築前の話を宿毛の方に聞いたことがある。堰上流には魚付き林が生い茂り餌を求めた水鳥が集まった。湛えられた水面では子供も多く遊んだという。滑らかに堰の表面を流れ落ちる風景はいつまでも見飽きることはなかったであろう。在りし日の風景を思い、老爺の語りに耳を傾けに訪ねてみてはどうだろうか。(崎谷)

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参考文献

崎谷浩一郎:曲線斜め堰の設計原理,東京大学工学系研究科社会基盤学専攻景観研究室修士論文,2001.

種別 可動堰
所在地 高知県宿毛市
竣工 平成15(2003)年
管理者 高知県宿毛土木事務所
設計 アプル総合計画事務所 日本建設コンサルタント

 

 

 

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