四国インフラ015 うだつの町並み

今日もうだつはあがっている


『うだつ』とは隣家との境に二階の壁面から突出して作られた袖壁のことであり、〈うだつが上がらない〉の語源の一つになっている。隣家の屋根との見切りや防火の目的で造られたが、次第に財力の誇示としての意味合いが強くなっていった。徳島県では様々な場所でうだつの町並みが見られる。

最も有名なものは美馬市脇町のうだつの町並みである。脇町は撫養街道と讃岐へ続く街道の陸運、吉野川の水運に恵まれた脇町は城下町であり、染料である藍の集散地として栄え、商人はその繁栄ぶりを顕示するようにうだつをあげた。その町家が400mも続いており、昭和63(1988)年に重要伝統的建造物群保存地区に選定され、近世・近代の景観が残されている。

美馬郡つるぎ町貞光のうだつは二層うだつと呼ばれ、小屋根部分を二段にすることで、より高い家格を表した。江戸時代には、代官所がおかれた郷町であり、吉野川の沿岸部で山間部の入り口でもあったため、商業の町へと発達し、うだつの建物が多く造られた。重要伝統的建造物群保存地区に選定されてはいないものの、住民によって保存が行なわれている。

三好市井川町にも、うだつの町並みが残っている。上記の二つには及ばないが、刻みタバコの生産により発達し、うだつをあげた地区である。現在はトタンで補修されているものや、補修されていないものがある。

観光地化された美しいうだつが残る一方、富の象徴とされたうだつが時代とともに風化していく。交通手段の変遷や人々の趣向によって移りゆく、町という生き物は本当に興味深く儚いものである。(藤原・谷野・重山)

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種別 街並
所在地 徳島県美馬市脇町 美馬郡つるぎ町貞光 三好市井川町

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