四国インフラ012 府能隧道

新旧の<血管>がまちを繋ぐ


府能隧道は、佐那河内村と名西郡神山町との連絡隧道として大正12(1923)年に開通した。府能隧道の建設は、佐那河内村と名西郡神山町の各集落有志45人によって、明治40(1907)年に府能峠改修協議会で建議し、同45(1912)年7月の村会で次年度から工事に着する単行決議を行ったところから始まった。神山町の鬼籠野村と恊働して、県費補助を求めたが、すぐにはかなえられず、大正6(1917)年に県・郡から補助が認められて、工事に着手した。それまでは峠を越えて行き来していたが、隧道が開通した後は、両郡と徳島市を結ぶ運輸路線として重要な役割を担ってきた。時には、佐那河内村特産のみかんの収穫を手伝うために、この隧道を通って神山町からも手伝いに来たりしていたという。

側壁を垂直とした幌型で、側壁部分は花崗岩を加工した算木積み、アーチ部は小口積み、控え壁はオランダ積みの煉瓦により構成されている。頂部には花崗岩の要石が入れられ、笠石や扁額は花崗岩で造られている。昭和59(1984)年にライナープレートによる整備、同62(1987)年には防水シートによる整備が施されているものの、同隧道の特徴である正面壁入口部分のレンガ巻きの外観や、飾り石の保存状態はきわめて良好で建設時の特徴を良くとどめている。

狭小・老朽化に伴い、新たな新府能トンネルが建設されたため、主要道としての機能は移行した。そのため、現在は通行量が減少してはいるものの、両郡と徳島市を結ぶ生活路線でありつづけている。隧道を挟んで広がる佐那河内村と神山町それぞれの風景を楽しむのも、ひとつだろう。なお、府能隧道は選奨土木遺産に選定されている。(尾野)

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参考文献

徳島県教育委員会:徳島県の近代化遺産 ―徳島県近代化遺産総合調査報告書―,pp.122-123,2006.
土木学会 土木史研究委員会:日本の近代化遺産―現存する重要な土木構造物2800選―[改訂版],pp.236-237,社団法人 土木学会,2005.
内務省土木試験所:本邦道路隧道輯覧,1941.

種別 隧道
所在地 徳島県佐那河内村-神山町
構造形式 煉瓦トンネル
規模 延長179.8m 幅3.7m
竣工年 大正12(1923)年
備考 平成29(2017)年度 選奨土木遺産
土木学会選奨土木遺産
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