四国インフラ003 吉野川に架かる橋梁群

<骨格>とクロスするたくさんの<動脈>


四国一の流域面積3,750k㎡を誇る<骨格>吉野川には、徳島県内だけでも46もの橋が存在する。その多くは元々渡し舟場があった位置で、昭和の時代<骨格>とクロスする<動脈>はその形を渡し舟から橋へ変えていった。

昭和初期に完成した橋の中には、近年その姿を変化させているものもある。

昭和2(1927)年完成の三好橋、昭和3(1928)年完成の穴吹橋、昭和3(1928)年完成の吉野川橋の3橋は、いずれも東京帝国大学出身で日本を代表する橋梁技術者、増田淳の設計だ。三好橋は、老朽化により平成元(1989)年に吊橋からアーチ橋に改造された。名橋と言われた穴吹橋も、平成3(1991)年にトラス橋から桁橋に架け替えられた。唯一現存する吉野川橋は、17連の曲弦ワーレントラス橋で、完成当時は東洋一長い橋として全国からの見学者が絶えなかったそうだ。吉野川北岸から眺める吉野川橋は、背景の眉山と共に徳島を代表する<顔>として住民に親しまれている。

また面白いのは、吊橋、アーチ橋、トラス橋と単にさまざまな形式の橋が架けられているだけでなく、広い川幅を渡る長くて大きい<動脈>をつくるために、その時代その時代の最新技術が取り入れられていることだ。

JR高徳線の吉野川橋梁(昭和3(1928)年完成)は、日本で初めて連続トラス構造(トラスとは、真っ直ぐな部材を三角形に組み合わせた構造)が採用された橋で、基礎の施工にも当時の最新工法「ニューマチックケーソン工法」が用いられた。阿波中央橋(昭和28(1953)年完成)は、戦後に架けられた日本で最初の長大橋で、親柱には日本を代表する彫刻家イサム・ノグチの彫刻が乗っている。名田橋(昭和38(1963)年完成)は、日本で2番目に架けられた「ディビダーク工法」による橋で、架設当時は日本一長い橋(橋長800m)であった。徳島自動車道の池田へそっ湖大橋(平成12(2000)年完成)は、道路部分を構成する桁を下から垂直な支柱のみで支える逆ランガー形式のコンクリートアーチ橋としては日本一の大きさを誇る。阿波しらさぎ大橋(平成24(2012)年完成)は、主塔から斜めに引張ったケーブルで桁を吊る斜張橋形式と、桁とケーブルでトラス構造を形成したケーブルトラスト形式を世界で初めて組み合わせた橋だ。吉野川水系の今切川に架かる加賀須野橋(平成26(2014)年完成)は、橋桁がそのまま上がってその下を船が通る昇開式可動橋で、車道橋として日本最大の可動部を有している。

各時代の最新土木技術の結晶が、四国の徳島でたくさんの<動脈>として大きく脈打っている。(板東)

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参考文献

徳島県県土整備部道路局道路政策課:吉野川に架かる橋梁~橋の博物館《とくしま》~,徳島県,2013.
福井好行:徳島県の歴史,山川出版社,1973.

種別 橋梁
所在地 徳島県
備考 池田へそっ湖大橋:平成11(1999)年度土木学会田中賞 平成14(2002)年度土木学会デザイン賞優秀賞 阿波しらさぎ大橋:平成24(2012)年度土木学会田中賞
橋の博物館とくしま土木学会田中賞土木学会デザイン賞
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