東京インフラ077 東海道

<循環器系>進化のショーケース


東海道は、東西の大都市を結ぶ、わが国随一の<大動脈>である。鉄道、国道一号、東海道新幹線、東名・名神高速など、時代に先駆けたインフラが次々とこの場所に整備され、<循環器系>の進化を示すショーケースのような役割も果たした。

中でも東京人にとっては、文明開化を告げる鉄道開通の衝撃は大きかったことだろう。1872年に新橋・横浜間を結んだ日本最初の鉄道が、海際を通る東海道のさらに外側、つまり海上ルートを通り、丘陵部の切り通しや多摩川での架橋など、海、丘、川の地形的障害をものともせずに力強く貫かれた。「東京蒸気車鉄道一覧之図」には、蛇行する街道・東海道に対し、鉄道が直線的に通された様子が、よく描かれている。

鉄道・東海道線の周囲は、その後埋め立てが進み、今や都内では鉄道から海を望むことはできない。<血管>が、海までの厚い<皮膚>に覆われてしまったわけだが、かといって埋没することなく、より太く、強い<動脈>に改造されて、今も目まぐるしい人とモノの移動を支えている。

一方、<循環器系>の進化の歴史を凝縮したこの場所は、人間と文明の関係という、より根源的な問いもわたしたちに投げかけている。

「片道三時間ならば大阪に一泊するのだが、二時間半になったとたん、どうしたわけか出張が日帰りになってしまった。・・・そこでこのごろ、新幹線の速度如何にかかわらず、旅先では一泊すると決めた。文明に身をゆだねていたのでは持たぬ、と悟ったのである。・・・外国人はみな、新幹線の技術に驚嘆し、とりわけダイヤを奇跡と賞賛する。しかしそれを日常とする私たちは、文明と人間の正しい関係を模索しなければなるまい。完成した新幹線は、すでに哲学の領域を走っている。」(浅田次郎)

文明開化の象徴・鉄道が東海道を駆け抜けて、まもなく150年。この間、<人体>の機能は目覚ましく進化した。しかしこの際限のない進化の行きつく末にも、そろそろ思いを巡らす時期にきているのだと思う。(北河)

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引用
浅田次郎:文明の「完成」、週刊文春、2014/5/1.

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